ひきこもり
病気の概要や特徴
ひきこもりってどんな病気?
「ひきこもり」とは
ひきこもりは病名ではありません。これはひとつの状態像を指します。具体的には「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせず、6ヵ月以上続けて自宅に引きこもっている状態」を言います。また、時々はコンビニなどに外出することがある場合も、「ひきこもり」に含まれます。
昨今は成人のひきこもりが多くなったと言われ、これは「社会的ひきこもり」とも呼ばれ、全国に100万人いるとも推測されます。これは次のように定義づけられています。
- 20代後半までに問題化
- 6ヵ月以上、自宅にひきこもって社会参加をしない状態が持続
- ほかの精神障害がその第一の原因とは考えにくい
「社会的ひきこもり」と随伴症状
「社会的ひきこもり」には、多彩な症状が随伴する。ほぼ頻度順に列挙すると、対人恐怖(自己臭、醜形恐怖を含む)、被害関係念慮、脅迫症状、家庭内暴力、不眠、抑うつ気分、自殺念慮、摂食障害、心身症状、心気症状などがある。
ひきこもりの原因
原因はさまざまです。原因が特定できない場合もありますし、複数の原因が重なっていることがほとんどです。
「いじめや不登校などの学校に関すること」「職場や仕事に関すること」「進路の選択に関すること」などさまざまです。誰でも「ひきこもり」になる可能性があるということです。
社会の問題としてひとつあげられるのは、若者の貧困化が大きいと思われます。若者のワーキングプア、ニートなど就労そのものが困難な状況も多く、若者自身が意欲を失っていき日本全体が弱体化しているとも考えられます。それ以外にも非正規雇用の問題、高齢化のため親の介護のため離職するも再就職ができないなどもひきこもりにつながるものと思われます。
うつ病や統合失調症などの精神疾患の中には「ひきこもり」に似た症状をひきおこすものがあります。状態はよく似ていますが、対応方法が異なりますので、早めに医療機関や行政の窓口に相談することをお勧めします。
診療のアプローチ
精神科での診療や支援者による相談に際しては、当面は家族相談を中心に対応する必要がある。本人自身の治療意欲がしばしば不安定であり、最初から治療相談の場面に本人が現れる可能性が低いためである。
それが可能な支援者は限られているため、多くの治療者や支援者は、まず家族からの相談を積極的に引き受け、介入のタイミングを計る必要がある。
ヒアリング
本人や家族にこれまでの経過を、下記3点に注意してお伺いいたします。
- ひきこもりに至る直接のきっかけになるエピソードの有無
- ひきこもり状態に先行する何らかの症状や問題(発達上の遅れを含む)の有無
- ひきこもって以降に生じた症状の有無
ひきこもりをお越し得る疾患
上記アプローチやヒアリングを行ったうえで、「ひきこもり」を起こし得る下記の疾患の鑑別診断が必要である。
- 社会不安障害
- 強迫性障害
- うつ病
- 広汎性発達障害
- ADHD
- 選択的緘黙症
- 精神遅滞
- 分離不安障害
- 反応性愛着障害
- PTSD
- パニック障害
- 解離性障害
- 適応障害
- 摂食障害